なんでも民営化はもう古い!?世界で広がるアンチ・オスティリティ(反緊縮)!

弁護士 尾林芳匡さんに聞く
今回は尾林弁護士にお話を聞いてみたよ!ではさっそく!
公立病院が独法化されるというのは、何がいちばん問題なんだろう?
都立病院は、周産期とか小児とか障がい者とか採算がとりにくい医療を、責任をもって担ってきました。そうした分野で縮小や切り捨てが起きますし、差額ベッド代など患者負担も確実に増えます。
公立病院の独法化は、他府県ではもう行われているんだよね。
大阪では独法化後、診断書料やセカンドオピニオン料など、健康保険制度の枠外の料金が短期間に値上げされています。独法化すると、議会の審議なしに料金が値上げできるので、効率優先で住民負担を増やしたのです。
国立病院も独法化後交付金が大きく削られ、財政難に陥りました。そこで、採算を優先して不採算の診療科は閉鎖され、差額ベッド代など収入増が図られました。医療従事者の負担は増え、国民のための医療サービスは低下しました。東京都内では、独法化した健康長寿医療センター(旧・東京都老人医療センター)では、収益を上げるため差額ベッドが急増しました。
うーん、困るよね…。でもでも、「お役所仕事は不効率だから独法化、民営化したほうがいい」という議論も聞くけれど?
医療は医療法や健康保険制度によって規制されているので、「お役所仕事だから」「民間だから」というような差があるわけではないんです。効率化のために行政医療を切り捨ててはならないと思います。
都立病院関係者のなかにも、「都が決めてしまったら仕方ない」という意見もあるみたいだけど、海外では民営化に対し強い反対が起きてるよね。
もちろんです。医療にしろ水道にしろ交通にしろ、公共サービスが充実したほうが住民は暮らしやすい。民営化というのは営利企業等に委ねるということですから、企業が儲けようとすれば利用料金が上がったり不採算部門が切り捨てられます。それは間違いだ!という議論や運動が、海外ではアンチ・オスティリティ(Anti-Austerity 反緊縮)と呼ばれて広がっています。私は「公共サービスの充実」と呼びたいのですが。
そうした“綱引き”の中で、いったん民営化された水道がもう一度公営に戻るってことも起きてると。
そうですね。一時期、水道の運営が一部企業に委ねられるという事態が相次いで、その結果、経済的弱者が公の浄水を使えなくなったり疫病が流行するという事態になりました。世界水フォーラムという国際的運動が始まり、パリとかロンドンでも、水道が再び公営化されています。時代は「一路、公共サービスの縮小」ではありません。とくに水とか医療のようにいのちに直結する分野では、公共がしっかり責任を果たすべきだという考え方が、世界的にみても広がっています。
何でも民営って古いんだね!
それでそれで、都立病院独法化を止めるにはどうしたら。
やはり世論です。「地方独立行政法人」という制度そのものがあまり知られているわけではありませんので、実際に患者負担が増加したり、採算がとりにくい分野が縮小・閉鎖されサービスが低下したといった各地の実態を都民のみなさんに理解していただいて、反対の世論を広げていくことがとても大切だと思います。そうすればきっと、都立病院は守れます。
尾林弁護士、ありがとうございました!