ひとりの医師として

医師 香山リカさんに聞く
今回は医師・香山リカさんにお話を聞いてみました!
ひとりの医師として都立病院の独立法人化に反対します。私は長く精神科臨床に携わり、現在はより総合的に「こころとからだ」を診る医療を目指して総合診療科でも臨床を行っています。「調子が悪い」と訴える患者さんを心身両面から診ていく中、いつもぶち当たるのが「採算」や「効率化」の壁です。
もちろん、それらを度外視して行う医療が必ずしもよいものとは思えませんが、十分な時間や人手もかけられず、必要な検査や治療もできないというのは、医療に携わる者としては自らの誇りや尊厳を踏みにじられる思いです。そんな中、これまでいわゆる「行政的医療」という扱いで、「採算よりも命を守る」という医療を続けてきてくれた都立病院は、私にとっても心の支えであり頼るべき命綱のようなものでした。
ところがそれさえも、独立法人化しようとする動きが起きています。

「採算」と「経営効率化」で何が切り捨てられるのか。

それは、何より医療を必要としている都民の方の健康そして命、それからそこで働く人たちの労働環境の安定です。
「都立病院だから」と安心してかかっていた患者さん、仕事に打ち込んできた医療従事者たちは、今後どこに行けばよいのでしょう。また、公立病院ならではの適切な検査、治療を受けられた人たち、医療費を少しでも抑えたいと願っている低所得の都民たちは、「自分の健康や命は自分で守るべき」といった自己責任論を押しつけられ、泣く泣く医療を受けるのを控えなければならないのでしょうか。
少なくとも東京都は今回の決定をするにあたり、都民や医療従事者意見をきくなど議論を開かれたものにするべきです。

いざというときに安心してかかれる公立の医療機関があってこそ、都民は思いっきり仕事や子育てをがんばることができるのです。都立病院の灯が消え、独立法人のキラキラのネオンサインが輝くといった改革は、誰も望んでいません。

都立病院が東京都の直轄の医療機関として運営されることを、強く願っています。

香山さん、ありがとうございました!