都立病院の独立法人化に反対します
東京都は独立法人化の具体化をやめ、直営を堅持し、都民のための都立病院に充実するよう求めます。
2018年1月17日
都立病院の充実を求める東京連絡会
代表委員 氏家祥夫
1月17日に開かれた「都立病院経営委員会」は、今後の都立病院の経営は地方独立行政法人が最もふさわしい経営形態として確認し、東京都へ報告することとしました。
都立病院の地方独立法人化(独立法人化と略す)は、都民が求める都立病院としても、行政的医療を安定的に提供する都立病院の使命から見ても、都立病院の経営形態としてふさわしいものではありません。
都立病院の独立法人化は、都民のために仕事をする予算を減らし、これまで東京都が運営してきた病院を切り離し、独立採算の病院にしていくものです。
都立病院は、災害や感染症の対応、周産期・障害者や高齢者、難病や、精神科救急の対応など、採算の取れない分野の医療(「行政的医療」と言われています)も提供し、このため都の予算から約400億円を負担して都民のいのちを守る仕事を担ってきました。
独立法人になれば、この予算は削られ都民のための医療ができなくなるおそれがあります。
「都立病院経営委員会」は毎年約400億円が都の一般会計予算からの繰り入れを問題にしていますが、都立病院の経営は2016年度を除けば黒字経営が続き安定しており、一般会計からの支出が都財政を圧迫しているという事実はありません。
今すぐ、早急に経営形態の結論を出す理由はありません。
独立法人になれば「独立採算」と「経営効率化」が求められます。料金(健康保険制度外)の変更なども都議会の審議なしで行われ、採算を重視しようとして料金値上げなどが行われる可能性があります。
先に独立法人化した「健康長寿医療センター」では「都立老人医療センター」の時より、病床数は減らされ、高い差額料金を取るベットは増え、個室は25%に拡大し、有料室利用時には10万円の保証金を現金で支払わなければなりません。
又独立法人化された大阪府立病院では、予算が削減されて、保育器を購入する予算がなく、保育器を府民のネット募金で購入するという事態も起きています。
独立法人化では、都民の負担が増え、医療に掛かれない都民が増えるなど、充実とは逆さまの事態となりかねません
「経営効率化」で医療サービスの向上にはつながりません。人の命に関わる医療では、最新鋭の医療器機を入れても医師・看護師など病院職員の人手を減らすことができません。一般会計からの繰入金が削減されれば新たな人材の確保が困難になり、人手を減らせば医療に支障を来し、医療の従事者は疲弊し、医療サービスの低下を招きかねません。
現在でも、都立病院では、過労死ラインを越える膨大なただ働きが発生しています。独立法人化で人件費の抑制が強まれば、違法なただ働きが広がることは確実です。労働条件悪化は早期退職をもたらし、医師・看護師など医療人材不足を来たし、医療サービスの低下となります。貧困や不安定雇用の増大などによる病院にかかれない都民の要求に応えることができなくなります
地方独立行政法人(非公務員型)の導入は、都立病院で働いている公務員の身分を発足時に剥奪します。公務員は「全体の奉仕者」として都民に奉仕する使命を担っています。これを奪って安定した都民のための医療サービスはもっと良くなるのでしょうか。
東京都都立病院経営本部は、報告を受けて、3月までに発表する「中期計画」に都立病院の独立法人化を書き込む予定としています。
しかし、これまで都民の医療に関する実態調査やアンケート、パブリックコメント、都議会での審議は行われていません。拙速に独立法人化に進めるべきではありません。
東京都は都立病院の独立法人化の具体化を中止し、直営を堅持し、都民がだれでも、いつでも、安心してかかれる、都立病院に充実するよう求めます。